「どうだった?」
エンディングを弾き終わり三線をケースにしまってから僕は尋ねた。
「なんか甘すぎるドラマみたいだと思った」
 真澄は少し顔を赤らめていた。
「それって良くなかったっていうこと?」
 甘く作り過ぎたかと後悔が頭をもたげそうになった時に、真澄が僕の言葉を否定した。
「そうじゃないよ。南十字星の下でプロポーズなんて最高だと思う。私だったら気絶しちゃいそう」
 真澄は妙に嬉しそうだった。
「少しはハッピーな気分になってもらえたかな?」
「うん、とっても。でも・・・」
 言いかけて真澄は天井を見上げた。
「でも、何?」
 真澄は天井を見上げたまま素直に思いを語った。
「私もプロポーズとかされてみたかったなって、ちょっと思っちゃった」
 上を向いたまま閉じた瞼の裏には、あるいは涙が滲んでいるのかもしれないと思った。
「そうか、よかった」
「どういうこと?」
 僕は座布団から降り真澄の正面に回った。そしてポケットから箱を取り出した。
「オンボロアパートの天井の下だし、真似事しか出来ないから安物だけど、気持ちだけでも受け取って欲しいんだ」