「そんなことないよ。真澄さんが僕と一緒に歌ってくれる時の声、僕はすごく気に入っているんだ。本当は全部の歌を真澄さんに歌ってほしいくらいだよ」
「そんなこと言われたら益々やり難くなるじゃない」
 真澄は消極的だったが僕としては引き下がるわけにはいかなかった。もう一押し頑張ってみようと思った。
「そんなこと言わないで協力してくれよ。お願いだから」
 僕は真澄の前で両手を合わせて懇願した。我ながら芝居じみていると思った。
「まあ、純さんの頼みなら断るわけにもいかないわね」
 居候の身分に申し訳なさを感じていたせいもあったのか、真澄は渋々と僕の要望を受け入れた。
「ありがとう。やってくれるんだね」
「ええ、でも期待しないでね。」
 そうは言われたが僕は大きな期待をしていた。

 無事に作詞の依頼が済んだので、僕たちはすぐに実際の作業に入った。
「まず、新城島がどんな所か教えてくれない?」
 真澄が当然の質問をしてきた。
「そうだね。やはり視覚的に捉えてもらいながら話すのが一番かな」
 僕はまず最初に八重山のフリーペーパーに掲載された地図を真澄に示した。