「それに、いつも良いアドバイスをくれるじゃないか。だから絶対にできると思う」
「簡単に言わないでよ。それに私が作詞をしたら純さんの歌にならないじゃない」
 どうにか逃げ切ろうとする真澄に僕は逃げ道を与えなかった。
「そんなことないよ。僕が曲を作ればそれは立派に僕の歌だよ。そもそも、僕が全部の歌の作詞・作曲をしなければいけないなんてルールは無いんだから」
「まあ、それはそうね」
 真澄はもう逃げられないと観念したのか、僕の要望の真意を尋ねてきた。
「でも、なんで私に作詞をして欲しいと思ったの?」
「ちょっとネタに困っているというのも嘘ではないんだけど、アルバムには一つくらいは完全に女性目線の歌があった方が良いと思ったんだよ」
「女性目線ね」
 真澄は不本意ながらも、僕の意図するところを理解してくれたような口ぶりだった。
「そう、女性目線で作詞してもらって、女性の声で録音したいんだ。そう、つまり真澄さんに歌ってほしいと思っているんだ」
「作詞だけじゃなくて、歌うなんてハードルが高すぎない?」
 さすがに、次なる要望には真澄も難色を示した。