梅田駅はもっと分かりやすく作って欲しい。
人を押し分けながら、バスターミナルを抜けて、待ち合わせ場所まで、アプリで道を調べながら歩く。
どの道を通ったのか、繰り返し歩いているのか全くわからない。

私と同じようにライブに向かう人たちもいたようで、
メンカラのトートバッグを肩から下げて颯爽と目の前を去っていく。

歩くのを諦めて、沙良に電話しようとする。
「麻沙美〜」

この人混みの中から、私を見つけて手を振りながら駆け寄る沙良。

少しだけ驚く。
結婚式の時に見た沙良よりも痩せているとかなり遠くから見ても分かったから。

結婚式のために痩せ身エステとか脱毛とかファスティングとかを頑張って痩せていた彼女よりも、やつれているという表現が正しいと思わせる。

メンバーカラーが紫の神楽くんに合わせて、薄紫のチュールスカートが揺れていた。

「久しぶり。でもよくわかったね私って」

りーくんのメンバーカラーは黒で、黒いワンピースをさらりと着ただけ。何も変哲もない、ライブに行くとも、近所を散歩するとも取られかねない服装だった。

「当たり前じゃん。輝いてるもん」
「なにその冗談」

沙良が私の手を取って地下鉄の駅まで連れて行く。
中学生の時も、街へ遊びに行く時、ふらふら迷子になる私を連行していくことがあった。
あの時の沙良の手は力強くて頼もしかった。