「ごめんね。沙良」

フローリングに正座して、頭を下げる夫の頭をただただ見つめていた。

「どの部分にごめんって思ってるの」

次に出た言葉に温度はなくて、私から発せられたては思えなかった。誰かアフレコしているんじゃないかと他人事のように思えた。

「…マッチングアプリしてたこと?」

「私知ってたけど。そんなこと」

驚いたように私を見上げる彼を見て、
随分私は見くびられていたんだなと分かる。
どうしてバレていないと思えるんだ。

スマホのロックナンバーを私の誕生日にしたからって、そこで中身を見るのを止めたりしない。私がそんな女だと知らなかったんだろうか。付き合っている頃からやっていたつもりだったのに。夫はどれだけ私を下に見ていたんだろう。

「マッチングアプリで20そこそこの大学生に色々買ってあげてたことにごめん、ではないの?」
クレカ履歴が、女性向けブランドで買い物しているのに、ブランドがハイティーン向けばかり、そして私にはなにもプレゼントされてないことに気づいた。

「ごめんなさい。お金がないって悩んでたから」

でも、体の関係とかはないんだ。本当だよ。彼女は特別

意味のわからない言葉を羅列するこの男が気持ち悪い。

まさかパパ活をしている、若い子にカモにされているだなんて思ってもなかった。

「お金、払っているうちは浮気じゃないんでしょ?」

私が笑ってそう言うと、許されるとでも思ったのか、ちょっと気が抜けたような顔をした。

「それでもキモいなって思うよ。ごめんね。明日からライブだから。ちょっと話しかけてこないでね」