中学生の頃はアイドルと付き合いたかった。

きっときれいで浮気なんかしなくて完璧で私だけを好きなイケメンが、私を迎えに来てくれると信じていた。

でも、私が好きだったアイドルは簡単に女を殴って、酒に溺れて消えた。

アイドルは私の王子様じゃない。みんなの王子様であり偶像だ。

私は、アイドルが偶像であろうとする姿が好きだった。

後藤神楽くんこそ、リアルに近い偶像を見つけた。
彼と画面越しに目が合ったあの時、
彼なら、私にリアルを見せないでいてくれると直感した。

デビューしてからも、不祥事はおろか、『爽やかすぎる』『同級生にいた。優しい委員長みたい』というレッテルが貼られた。
18歳で、そんなキャラつけられて可哀想だと思う反面、それがアイドルという仕事であり、君なら完璧に出来るという信頼感があった。

唯一、私が推し活に引きずり込めた麻沙美は、りーくんが好きなようだった。
りーくんは正直、神楽くんとは違って、プロ意識が足りない気がした。カメラに抜かれてないと思って、油断しているところや、口を大きく開けながらバカ笑いするところが、そこらの一般人みたいだと思った。(オーディション番組だから元々一般人なのは当たり前だけど)

麻沙美が推し活をするのは初めてだった。
中学生のときから私がアイドル語りをしていても、引かずに聞いてくれた麻沙美。当時は聞くだけだったのに、今度はライブに一緒に行く。ライブは抽選。当選すれば参加できる。当選するかどうかなんか分からないけど、行く。

ライブに行く、という理由なら夫も「行ってらっしゃい」と言いやすいのかもしれないと勝手に配慮した。

昔みたいに麻沙美と遊べるはずなのに、
何かに配慮して行動に移せない自分が嫌いだった。