「例えばなんだけど。麻沙美」

「うん」

「彼氏が、恋人の自分より年下の女の子。その子は苦学生です。その子に金銭支援と称してプレゼントをしていたら、どうする?」

「なにその香ばしい話題」

麻沙美は私が落ち着くまで適当にスマホをいじっていた。
学生の時、私が興奮して話す時もこんな感じでサラッと聞いてくれる。その冷たさが心地よかった。

さすがに私の話題だと感づいても、その事に突っ込むことも無い。

「私彼氏おったことないから、分からんけどさ」

麻沙美はスマホを石のベンチに直置きした。

硬すぎるベンチに臀部が慣れたのか、臀部の神経が鈍くなったのか、立ち上がるのが億劫で、音漏れや近くを走る電車の音を聞き流していた。
頭上の桜の葉がカサカサ鳴った。

自然にこんなに音があることを忘れていた。

「分からんけど、辛いと思う。彼氏は善意でやってるつもりなんやろ。でもそれ、女の子の為にはならんと思う。女の子は若さを使って金を貰ってるんか、金が無さすぎてそうせざるをえないのかは知らんけど」

「あと、もう一つ香ばしい話題」

「なに、火種ありすぎちゃう?」

「金払ってるうちは、浮気じゃないの?私らは推し活にグッズや遠征費かけてるでしょ。

彼氏は、金をかけなくなったら浮気って言うのよ。

風俗、キャバは金を払うやん。

やからセーフやろ。っていう理論」

「は?もしかしてさっきの火種と一緒にするなら、
若い女の子に金を払ってるから浮気ちゃうやろってこと?」

「体の関係ないから浮気じゃなくて支援。貧しい子に支援するやろ。それと一緒って言われた」

「なるほど。1ミリも分からん」

麻沙美は眉を顰めて考えてから言った。
まるで分かったみたいなテンションでいうから笑った。