いつも同じ景色を見ている。
窓の外に見える雲は季節によって違うらしいけれど、私には違いがあまりわからない。
窓から見える空って小さくて、ここが私の世界だって決められているみたい。
聞こえてくる虫の音、生えている草花、入ってくる風に季節を感じている。
そんな今の季節は5月も終わりの初夏。
ここにいなければ高校に通って友達と寄り道して帰っていたりしたんだろうか────。
それはないか......。
『もしも』を想像して笑いをこぼす。
一度でいい。
一回だけでいいから学校通ってみたかった、な。
そんな叶うことのないはずだった願いを呟いた。
私の中でいつも変わり映えのないこの病院での生活は、息をしながら死んでいるようなものだった。
命よりも大切なものが欲しくて、珠雨と入れ替わってみて初めて出会ったのは彼でした______。