「っうわぁ!」
柚香さんは小さくため息をつく。それから私の腕を引っ張ってきて図書室の外に連行させられた。
「あの、私はいていいみたいなんで戻りま――」
「なんなの、椋翔くんったら。あたしせっかくプロット書いたのに追い出すなんて」
引き戸開けようとすると、柚香さんの悪態に遮られた。頰をぷくうと膨らませてご機嫌ななめである。
確かに最低だ。どうかしている。
「えっと、椋翔くんって……」
どういう人?態度が私とふたりきりでいた時とはまるで違うんだけど。
「もう関わり始めて数日経つのに、自分から話そうとはしてこないし、書いてる小説も一度も見せてもらってない!せっかく顔はイケメンなのにほんとムカつく」
柚香さんはずけずけと文句を言ってきた。
それ、もし柳くんに聞こえたらやばいのでは?イケメンって褒めてるし。いや、全体的には完全な悪口か。
「あの、初対面はあっちから話かけてきました」
「は?椋翔くんが自分から話かける?そんなわけないでしょ?」
私は柚香さんに朝の筆談の様子を伝える。もちろん、偽りの姉弟関係になったことは伏せてだ。今思い出しても弟になってという発言は羞恥心を覚える。
「何それ、わけわかんないんだけど!心開いてるかどうかもわかんない」
事情を話終えると、柚香さんは鬼のような形相でつめよってきた。怖い。柳くんに見せてる顔とは正反対だ。
「私も……よくわかんないです」
無愛想な言葉と仕草と表情で、仲良くしろだなんて。
「ほんとムカつく。さっきもなんでか虹七ちゃんを追い出そうとはしてなかったし」
「えっと、わかんないです」
「あー、ムカつく。今すぐにでも櫂冬とラリーしたいわ!でも、手首がね……もう!2度とプロットなんて書いてやらない!」
柚香さんは大きなため息をひとつついた。
「あの……椋翔くんはなんで声を出そうとしないんですか?小さい声とか筆談を強要するんですか?」
面倒くさいし、私の調子をバグらすイケメンだしなんなの彼は。
「えーとね、椋翔くんは丘先生にも筆談を強要してきたらしいよ。耳が聞こえすぎてるんだって」
「えっ……聞こえすぎ?」
なんだ、それは。何かの病気か?
「とにかく聴覚がバグってるの。詳しいことは知らないけど」
柚香さんはそう言って怒り狂ったように引き戸を勢いよく開け、柳くんを連れて階段を降りていった。まるで嵐のような去り方だ。
私はそれを唖然と見送るしかなかった。
柚香さんは小さくため息をつく。それから私の腕を引っ張ってきて図書室の外に連行させられた。
「あの、私はいていいみたいなんで戻りま――」
「なんなの、椋翔くんったら。あたしせっかくプロット書いたのに追い出すなんて」
引き戸開けようとすると、柚香さんの悪態に遮られた。頰をぷくうと膨らませてご機嫌ななめである。
確かに最低だ。どうかしている。
「えっと、椋翔くんって……」
どういう人?態度が私とふたりきりでいた時とはまるで違うんだけど。
「もう関わり始めて数日経つのに、自分から話そうとはしてこないし、書いてる小説も一度も見せてもらってない!せっかく顔はイケメンなのにほんとムカつく」
柚香さんはずけずけと文句を言ってきた。
それ、もし柳くんに聞こえたらやばいのでは?イケメンって褒めてるし。いや、全体的には完全な悪口か。
「あの、初対面はあっちから話かけてきました」
「は?椋翔くんが自分から話かける?そんなわけないでしょ?」
私は柚香さんに朝の筆談の様子を伝える。もちろん、偽りの姉弟関係になったことは伏せてだ。今思い出しても弟になってという発言は羞恥心を覚える。
「何それ、わけわかんないんだけど!心開いてるかどうかもわかんない」
事情を話終えると、柚香さんは鬼のような形相でつめよってきた。怖い。柳くんに見せてる顔とは正反対だ。
「私も……よくわかんないです」
無愛想な言葉と仕草と表情で、仲良くしろだなんて。
「ほんとムカつく。さっきもなんでか虹七ちゃんを追い出そうとはしてなかったし」
「えっと、わかんないです」
「あー、ムカつく。今すぐにでも櫂冬とラリーしたいわ!でも、手首がね……もう!2度とプロットなんて書いてやらない!」
柚香さんは大きなため息をひとつついた。
「あの……椋翔くんはなんで声を出そうとしないんですか?小さい声とか筆談を強要するんですか?」
面倒くさいし、私の調子をバグらすイケメンだしなんなの彼は。
「えーとね、椋翔くんは丘先生にも筆談を強要してきたらしいよ。耳が聞こえすぎてるんだって」
「えっ……聞こえすぎ?」
なんだ、それは。何かの病気か?
「とにかく聴覚がバグってるの。詳しいことは知らないけど」
柚香さんはそう言って怒り狂ったように引き戸を勢いよく開け、柳くんを連れて階段を降りていった。まるで嵐のような去り方だ。
私はそれを唖然と見送るしかなかった。