やるせなさや無力感に押しつぶされ、開けても暮れても涙を流すばかりの日々。もちろんごはんは喉を通らず、気力を失っていく一方だった。

 机に向かう気もなく、ふとんをかぶってなぎじゃくる。どれくらい泣いただろうか。何度枕を濡らしただろうか。たぶん、一生分の涙を流していた。

 そしてある日、あの公園に来ていた。錦奈が死んでから既に2ヶ月がすぎ、季節は秋になっていた。先生が受験生だからと急かしてくるも、やる気になれない日々が続いていた。

 世界は僕を置いていくようにバカらしく輝いていて、人混みも知らんぷり。消えたい、死にたい。命なんかどうでもいい。汚い感情ばかりが心を埋め尽くしていく。隙間が1ミリもないくらいに。

 背負えきれないほどのもの抱えながらも、あの時の錦奈と同じように。俯いてブランコに腰掛けていた、その時だった。

「き、気晴らしにどう?」

 それは高めの緊張したような声だった。顔を上げると、タレ目に2つ結の女子が俺にテニスラケットを差し出していた。その焦げ茶色の瞳は泣き腫らしていて、つらそうに見えた。

「今さ……そんな気分じゃないんだ」

 人が泣いてる時にテニスラケット差し出してくるやつなんて初めて見た。考えなしか。僕の気持ちも考えてくれよ。初対面だからそんなこと無理なのはわかっている。けれど考えずにはいられなかった。

「ほんとはさ、あたしもそんな気分じゃない」
「は?」

 じゃあ、なんで?

「でも気づいたらラケット持ってここにいた。ラリー相手いないから頼みたいの」

 なんじゃ、そりゃ。理由らしくない理由だ。バカらしくて笑いが込み上げ、溢れていた涙が止まる。

「せっかくだからさ、ため込んでるやつ押しつぶすように思いっきり打ってよ!あたしも手加減しないから」
「……いいのか?」

 そんなことして。目の前にいるのは女子なのに。絶対あとでなんかケガとかになりそうだ。