でも私にはよそよそしく感じられる。穏やかな雰囲気で、焦げ茶色のポニーテールとアーモンド型の眉と目はいい。けれど、方言混じりなのが威圧的を与えるというかなんというか。

「へー、そうなんですか」

 曖昧に返事をし、目線を下に落とす。すると、開いたままの本の文字が自然と目に飛び込んできた。でも先生が隣にいるという状況のせいで頭に内容が入ってこない。
 
「もう2年生なのになんで打ち解けてないんだろうね」
 
 丘先生には近寄りがたい。いくら毎日顔を合わせる人でも絶対に仲良くなんてしてやるものか。

「丘先生もこっぺくさいからですよ」
「虹七さん、それは八つ当たりね」

 ただ事実を述べただけ。そう考えようとしてもそう返されると心に重くのしかかる。反論しようとするも声が喉元で消えてしまい、何も言えない。

「あ、図書室登校するのはどう?先生は昼休みにだけ顔を出すし、来る人も少ないから大丈夫よ」

 丘先生は思い出したように提案した。確かに今の私は完全なる本の虫だ。丘先生に頼んで図書室にある本を借りてきてもらうことは毎週のようにある。どうやら丘先生はそれが面倒くさくなったらしい。

 とはいえ、好都合だ。丘先生と顔を合わせる時間は少なくなるし、私はその分本に集中できる。来る人がいても気にしなければいい。別に話す必要もないのだから。

「いいですね」
「図書室はこの校舎の最上階よ。隣に屋上があるけど、そこは立ち入り禁止だからね」

 わかってる。入学式で生徒指導の先生に教えてもらったから。昔立て続けに飛び降り自殺する生徒がいて、見かねた先生が屋上を閉鎖したんだとか。
  
 行くわけがない。そんな恐ろしい事件がある屋上なんて。幽霊でもでてきそうで足すら向かない。