「大丈夫?久しぶりの教室だけど」

 翌日。松葉杖を両脇に挟んで約半年ぶりに教室の前に立っていると、柚香ちゃんに気にかけられた。もちろん、かなり緊張はしている。体全体が心臓になったかのようにドクドクといって重たい。冷や汗も頰を伝っている。
 だけど……。

「いじめてきた人はもう、いないんだよね?」
「うん!全員退学処分だって。3人ぐらいいたけど、ざまあみろだよ。あたしも自宅謹慎ぐらいは受けてもよかったんだけど」

 そう言って柚香ちゃんは口をすぼめている。この結果に満足しているのか否か、それすらもわからないぐらいだ。

「柚香ちゃんは充分後悔も反省もしてくれてるからいんだよ!それにここにいるのも柚香ちゃんのおかげだし。今度お墓参りも行くんでしょ?」
「うん!」

 背中を押すように励ますと、柚香ちゃんははじけるような笑みを見せてくれた。それから意を決して教室の引き戸を開ける。

「……お、おはよう」
 
 それは思いの外勢いよく引いていたらしく、ガンっと音がする。その音にギョッしたのか、クラスのみんなはいっせいに顔を上げた。会話もピタリとやめて時間すらも止まったみたいだった。

 視線の蜂の巣にされて気まずなりつったっていると、柚香ちゃんが背後から背中を押してくれて。

「おはよー!あれ?みんなどうしたの?」

 明るくからかうように声をかけてくれた。
 その声にはっと我に返ったのか、クラスメイトが近寄ってくる。その中にはいじめられる前に友達だった子達もいた。

「……お、おはよー!」
「久しぶりだね。あれ?なんか顔つき変わった?」
「そのケガ、大丈夫なの?」
「また前みたいに仲良くしよ!今度ショッピングモールとか行こうよ?」

 クラスメイトはにかみながら声をかけてくれて、胸がぽかぽかしてくる。