俺は一向に使えそうな嘘が思い浮かばず、もういっそのことここで頷いてしまえば早いなという結果に至った。
大空はまだ俺の好きな人を知らないのだから、肯定してもバレはしないはずだ。

「そうだよ」

なんてこと無いように、平静を装って言う。

半分以上なくなったペットボトルがバランスを保てずに倒れかけるくらいの強い風が吹いた。
本のページがパラパラと音を立てて捲れていく。

大空が何も反応を見せないので言葉を続ける。

「何でわかったんだ?」

大空は風で乱れた髪を耳にかける。

「行きたくない理由なんてやりたいことが残ってるからしか考えられなかった。清夏は別に英語ができないわけじゃないし、友達とか家族と離れたくないとかは思わなそうだし。この間、清夏が好きな子がいるって言ってたからそれかなって」

思いつくものの中から有り得なさそうなものを消していったら答えが出たのか。

俺の性格をよく知っている大空なら俺に好きな人がいると言うことを知っていさえすれば、消去法でも一つに絞って予想を立てられる。