中には独学や専門の塾などで三ヵ国語以上を話せる人もいたり。
俺もそのうちの一人だ。

「英語とフランス語はそれなりに。あとは、スウェーデン語を少しだけ」
「へぇ~。なんでスウェーデン語?」

痛い所をつかれた。

大空の好きなムーミンの発祥地フィンランドに興味があって旅行とか居住の可能性も考えてる、なんて言えない。

「ス、スウェーデン語は英語と似た単語も多くてさ。面白そうだなって」
「へぇ、似てるんだ」
「まぁ似た単語が多くても日本語にないような母音の発音があって大変だけどな」
「ふふふ」

大空が魔女のように笑う。
ローブを着させて窯に入った液体を混ぜる仕草をさせたら立派な魔女だ。

「私、スウェーデン語話せるんだよ」

大空は誇らしげに笑ってムーミンに出てくる言葉を言ってみせた。

「Titta på månskenet. Vad varmt! Jag känner att jag kan flyga!」

大空がスウェーデン語を発したこと。
その言葉が……俺の好きな言葉だったこと。
どちらも俺を驚かせる。

「"月の光をごらんよ。なんてあったかいんだろ。ぼく、飛べそうな気がするよ! "。清夏がムーミンを初めて見た時、好きだって言ってた言葉」

ムーミンシリーズを渡され無理だと押し返したあのあと、結局押し付けられて読んだのだ。

その中で一番好きだと思った言葉。