「だから、月光花と月をモチーフにしたアイスとかパンケーキとか色んなスイーツがあるんだ」
「で、そのアイスを食べたいと」
「そのとーり」

いつもより声が溌剌としている。
表情が見えないが、楽しみにしていることはよく伝わってきた。

ただ、ここで一つ疑問と後悔。

わざわざ俺を連れていかなくてもいいのではないか。
金だけ渡してっていうのもできたのでは、と。

それができたのなら、そうしておけばよかった。

俺の心臓が持たない。

しかし、ここまで来たのだから仕方がない。
これはアイスを食べたいと言う幼馴染に連れられてきた。
そう自分を洗脳しよう。

何度も心の中で唱えながら暫く走って駅に着く。

俺たちは邪魔にならない場所に自転車を止めた。

大空がスマホの地図アプリで店までの経路を確認する。

「えっと……あ、あそこの角曲がったところにあるみたい」

店の前まで自転車を押して移動する。

その店は黒を基調とした外観に三日月型の店名プレートを持ち、入り口が埋もれ無い程度に木々が植えてあった。
駅や住宅地の中にあるより森の中にある方が映える、ファンタジーな店。
シンプルでいて乱雑とした駅前にある意味、存在感がある。