ここら辺の新しくできた店ですら一か月経ってようやく知るほど情報を得るのが遅い俺が隣町のことを知っているはずがない。
そもそも隣町って広すぎるんだよな。
この町よりもずっと都会で車を持っている人なら隣町に行った方が色んなものが一気に手に入る。

海星(かいせい)駅前のショッピングセンターの近くなんだけど私ずっと気になってて。これから行こう!」
「は?」
「海星駅なら自転車の方が早く着くし、自転車で行こっか」

新しい店とやらに行くのは構わない。

ただ、これってデートなのでは?

やばい。
そう考えたら行きづらくなる。

「清夏、早くして」

既に自転車を持ってきているあたり、俺の意見は関係なく連れて行かされてたんだろうな。

もうこうなったら大空に着いて行くしかない。

急いで財布やスマホなど最低限の物を鞄に詰め込んで自転車に跨る。

俺は場所を知らないので大空の後ろを走った。

「なぁどんな店なんだ?」
「月光花っていう店名。月光花って正式名称はキバナアマっていう綺麗な黄色なの。月光みたいに綺麗だから雲南月光花(うんなんげっこうか)とか月光花って呼ばれるようになったんだって」
「詳しいな」
「調べたからね」

気になってつい調べてしまうのは共感しかしない。
俺も知らない単語が出てきたら真っ先に調べるからな。