チェックインを済ませ、部屋のキーを受け取る。
 エレベーターに乗り、部屋に向かう。
 そして、キーをかざして部屋に入りベッドに倒れこむ。

 ほんとは別れたくなかった。
 でも仕方がない。僕は病気で鈴花さんは好きすぎてしんどい。
 考えてみれば僕はすごく幸せ者だ。かなり愛されていたんだと今になって実感する。
 あんなに好き好きしてくれる人はもう現れないだろう。
 言ってしまえば全部僕の我儘だ。勝手に好きになって勝手に彼女のためと別れたいと願った。
 そして、彼女をしんどくさせた。全部僕のせい。

 落ち着いているのか落ち込んでいるのか。
 ベッドの上で鈴花さんとの約1年の短くて濃い思い出の一つ一つを丁寧に見ていく。
 二人で撮った写真や二人だけのやり取り。それのどれもがひどくキラキラとしている。

 朝日で目が覚めた。目の周りは赤くなっていた。
 どうやら思い出に浸りながら寝落ちしていたらしい。
 チェックアウトの時間が迫っていた。僕は急いで準備をして空港に向かう。

 空港に着き、すぐに飛行機に乗る。
 席に座りすこし待つと機体が浮き始める。

『さよなら。鈴花さん。大好きだよ』

 もう返信はないであろう彼女に最後のメッセージを残し連絡先を削除した。

   ――――本当に大好きだったんだよ