もう、どのくらいお母さんとお父さんの手を繋いだりしていないのだろう。
あの頃は、大きい手で私の小さな手を包むように握って一緒に歩いたりするのが当たり前だったのに。
いつの間にかそれが当たり前ではなくなってしまった。繋いだりすることもなく、まともに話すらしていない。私の話をしっかり聞いてくれなくて、私自身が無意識に避けてしまったりしているから。
親子で手を繋ぐ子どもたちがとっても眩しく、少し羨ましいと感じてしまっている自分がいた。
見るのが辛い......苦しい。
ここにはきらきらとした眩しいもので溢れていて、こんな私はここに居てはいけないような気がしてこの公園から去ろうとしようとした丁度そのとき。
―――かしゃん、からん。
「あっ、やっちゃった」
何かが落ちてころころと転がっていく微かな音と知らない誰かの声が聞こえてきた。
急にその音を聞いて思わず肩を震わせる。
早くこの場から、立ち去ろうとしたけど自然と足が止まった。
『助けよう』と思ってしまったのだ。
私の小さな悪い癖。
その人が落としたであろう、何かが私の近くに落ちていて目に入る。
よく見ると、石畳の上に空色の絵の具がついた筆が転がっていた。
こんな外で絵の具を使って何をしているのだろうと思いながらその場でしゃがみこんでその筆を拾う。
その後、声がした方へ近づいてみると白いワイシャツに薄くチェック柄がついたスラックスを履いている男の子が慌てて落ちてしまったものを拾っていた。
着ている服装からして、私と同じ学生のようだ。あのスラックスの柄から、確か北高の制服だった気がする。
「すみません、あっ、あのこれあなたのですか」と勇気を出して声をかけ、筆を渡す。こういうことはあまり慣れていなくて、できるだけ震えないように意識しながらなんとか言えた。
「あっ、はい、僕のです。ありがとうございます」
そっと筆を受け取って、風になびく髪、ほっそりとした体をした彼が微笑みながら軽く頭を下げる。
「い、いえいえ......」
顔とか何度も見て分かっているクラスの人たちよりも、全く何も知らない人と話すのがより怖くて苦手だった。だから目をしっかり合わせないように微妙に目を逸らす。
「本当に助かったよ。ありがとう」
視界の隅で人あたりが良さそうな笑顔を浮かべた。私は目を逸らしたまま「いえ」とまた言葉を返す。
彼はその後、私に会釈をして落としてしまったものを近くのベンチへ置くと色々な絵を描く画材セットが置いてある隣へ座りスケッチブックを片手で支えながら、まだ描き途中っだったらしい絵の続きを描くのを再開した。
彼から離れようとゆっくりと後ろを向いて歩き出してこのまますぐ立ち去ればいいのに、誰かが絵を描いている姿を見るのが久しぶりで彼が何を描いているのか気になって目が離せない。
あの頃は、大きい手で私の小さな手を包むように握って一緒に歩いたりするのが当たり前だったのに。
いつの間にかそれが当たり前ではなくなってしまった。繋いだりすることもなく、まともに話すらしていない。私の話をしっかり聞いてくれなくて、私自身が無意識に避けてしまったりしているから。
親子で手を繋ぐ子どもたちがとっても眩しく、少し羨ましいと感じてしまっている自分がいた。
見るのが辛い......苦しい。
ここにはきらきらとした眩しいもので溢れていて、こんな私はここに居てはいけないような気がしてこの公園から去ろうとしようとした丁度そのとき。
―――かしゃん、からん。
「あっ、やっちゃった」
何かが落ちてころころと転がっていく微かな音と知らない誰かの声が聞こえてきた。
急にその音を聞いて思わず肩を震わせる。
早くこの場から、立ち去ろうとしたけど自然と足が止まった。
『助けよう』と思ってしまったのだ。
私の小さな悪い癖。
その人が落としたであろう、何かが私の近くに落ちていて目に入る。
よく見ると、石畳の上に空色の絵の具がついた筆が転がっていた。
こんな外で絵の具を使って何をしているのだろうと思いながらその場でしゃがみこんでその筆を拾う。
その後、声がした方へ近づいてみると白いワイシャツに薄くチェック柄がついたスラックスを履いている男の子が慌てて落ちてしまったものを拾っていた。
着ている服装からして、私と同じ学生のようだ。あのスラックスの柄から、確か北高の制服だった気がする。
「すみません、あっ、あのこれあなたのですか」と勇気を出して声をかけ、筆を渡す。こういうことはあまり慣れていなくて、できるだけ震えないように意識しながらなんとか言えた。
「あっ、はい、僕のです。ありがとうございます」
そっと筆を受け取って、風になびく髪、ほっそりとした体をした彼が微笑みながら軽く頭を下げる。
「い、いえいえ......」
顔とか何度も見て分かっているクラスの人たちよりも、全く何も知らない人と話すのがより怖くて苦手だった。だから目をしっかり合わせないように微妙に目を逸らす。
「本当に助かったよ。ありがとう」
視界の隅で人あたりが良さそうな笑顔を浮かべた。私は目を逸らしたまま「いえ」とまた言葉を返す。
彼はその後、私に会釈をして落としてしまったものを近くのベンチへ置くと色々な絵を描く画材セットが置いてある隣へ座りスケッチブックを片手で支えながら、まだ描き途中っだったらしい絵の続きを描くのを再開した。
彼から離れようとゆっくりと後ろを向いて歩き出してこのまますぐ立ち去ればいいのに、誰かが絵を描いている姿を見るのが久しぶりで彼が何を描いているのか気になって目が離せない。