「あの、最後に。あれに乗りませんか?」



なんとなくもう解散かな、とそんな雰囲気を感じていると、ふと榎本さんが窓の外を指差した。


その先にあったのはライトアップされた観覧車だった。





「観覧車なんて、小学生ぶりかも」



みるみるうちに小さくなっていく人や車を上から眺めながら、ぽつりとそんなことを呟いた。



「俺もです。こういうのは興味がなかったんですけど、最後だし。華夜さんとの思い出が少しでも多くほしくて」



普段クールだと騒がれている先生は、実は熱くて真っ直ぐで、すごく優しく笑う人なんだとたったの数時間一緒に過ごしただけで知ることができた。



もしも先生と生徒の関係じゃなかったら…。


そんなことを考えてしまうくらいに私は“榎本さん”に惹かれていた。


自分でついた嘘が、胸をきつく締め付けてきて苦しくて、あんな嘘つかなければよかったと後悔した。