リン――――
気を失った五人の男たちを見つめ、日向は頬を染め上気した肌を落ち着かせるように胸に手を当てふっと息をついた。
リン――と首の鈴が鳴る。そして、
「日向様、お見事でした。御身体は?」
声がしたかと思うと鈴が煌めき、日向の身体から離れ人と成った。長い黒髪を揺らし、巫女のような鈴の装束を纏った綺麗な女性。
鈴彦姫が妖、スズ。
「大丈夫です。スズさんは?」
聞いてくるスズに、頬を上気させ肌に汗を浮かばせながら日向は微笑んだ。
「御安心を。私こそ日向様に護られました。月代の結界は強力でしたが、日向様の力に触れていたお陰で何事もなく済みました」
「そうですか、良かった」
ほう、と息をつき、日向は安心したように笑った。
癒滅の力。スズは妖だが、日向の癒しの力で月代の結界の中でも身を保ち傷つくことはなかったのだ。だが、スズ自身もまさかこれほどとは思っていなかった。
あれだけの結界をまったくの無効にした日向の癒滅の術。しかも、神楽舞はスズも大きな力を使うというのに、疲れがそれほどもない。それだけ、日向の術の力は強く本物だといえた。
だからこそ、気になり心配もする。スズは日向に近づき、支えるようにそっと身体に触れた。
「日向様。初めにお伝えしましたが、調子が優れないときはすぐにお話しください。神卸は心身に負担がかかります。必要とはいえど、無理は禁物です」
「有難うございます、スズさん」
(――けれど)
スズは改めて思う。これで日向と神楽を舞うのは二度目。心身を同一にしたからこそ感じる日向の全て。
蒼天の桜のように穢れなく清らかである日向だということはもちろんのこと。神楽を行えるのはごく一部、それだけで日向は稀有な存在だった。だけれど、それに加えて癒滅が術――与えられた力を内に受け、そして、外へと抜けさせる術を知っている日向は神楽にうってつけだともいえた。