そのとき、遠くから穢れの唸り声が聞こえてきた。

「来たな」

「そうだね」

伶龍と並んで立つ。
いつの間にか身体の震えは止まっていた。
そのうち、穢れの足が見えてくる。

「行くか」

チャキッと小気味いい音を立て、伶龍は鯉口を切った。

「うん」

私の返事を合図に、彼の足が地を蹴る。
同時に私も、走り出した。

「翠!」

途中で祖母たちが追いついてくる。

「ばあちゃん!
私たちに任せて!」

「わかったよ」

頷いた祖母の足が遅くなり、すぐに遙か後方へとなった。
穢れの本体に辿り着き、弓をかまえる。

「伶龍!」

「わかってるって!」

今回、伶龍は穢れに取りつかず、私の傍にいてくれた。
弓に矢をつがえ、かまえる。
放った矢は穢れに当たった。

――おおおぉぉぉぉん!

蟲がぞわぞわと散っていくと同時に、穢れが雄叫びを上げる。
足が持ち上がり、振り下ろされるそれに身がまえたものの。

「俺がオマエを守る!
だからオマエは安心して矢を打て!」

伶龍が刀で、穢れの足を防いでくれた。

「ありがとう!」

お礼を言い、さらに弓矢をつがえ、連続して二射、三射と打つ。