しどろもどろになりながら、意味もなく一粒ずつ米粒を口に運ぶ。

「そんなもん、さっさと犬にでも食わせっちまいな」

祖母が素っ気なく言い放つ。
当事者でなければ言うだけなので気楽でいい。

「犬ってそれ、夫婦喧嘩……」

ん?
この先を一緒に歩むという点では夫婦と同じなのか?

「夫婦喧嘩なら犬は食っちゃくれないよ」

「……ソウデシタ」

さらに小さくなり、もそもそと食事を進める。
私が伶龍の満足する答えさえ出せればこの喧嘩は終わりなのだとわかっていた。
いや、頭ではなんと言えば彼が満足するのかはわかっている。
しかしそこに私の気持ちが伴わなければ意味がない気がする。
それにそんな上っ面だけの答えなど、さらに伶龍から失望されそうな気もしていた。



――伶龍と喧嘩して一週間。

「穢れが、来るよ」

朝のお勤め、私たちを振り向いた祖母が重々しく告げる。

「えっ、早くない!?」

まだ伶龍と仲直りできていない。
なのにこんなに早く穢れが来るなんて。

「新年度はいつもこんなもんだろ」

「うっ」

ばっさりと祖母に切り捨てられ、なにも言えなくなった。