「これは翠様」

すぐに春光が私を迎えてくれた。
曾祖母は湯飲みを握ってうつらうつらしている。

「あー……。
寝てるなら、また」

「いえ。
そろそろ起きられるかと……」

「あら翠ちゃん。
いらっしゃい」

春光が全部言い切らないうちに曾祖母が起きたのか、顔が上がった。

「美味しいシュークリーム買ってきたから一緒に食べようと思って」

証明するかのように手に持った箱を上げてみせる。

「じゃあ僕はお茶を淹れてきますね。
シュークリームなら紅茶がいいでしょうか」

「おねがーい。
あ、春光の分もあるからね」

こういう菓子は伶龍は必ずふたつは食べるのからそれを考慮して三つ買ってあるので、問題ない。

「ありがとうございます」

会釈して春光が出ていき、私は曾祖母の前に座った。

「ねー、大ばあちゃん」

行儀悪くテーブルに顎を置き、指先で天板をほじる。

「自分が穢れと戦うのに疑問?とか感じたことある?」

民を守るために穢れと戦う、このお役目に疑問なんて感じたことはない。
でも、このあいだ伶龍に言われて、気持ちが揺らいだ。

「そうさねー」