祭壇に刀が置かれ、祖母が祝詞を上げる。
これは神様が穢れを祓うこの刀、伶龍を遣わせてくれたことに対する感謝の言葉だ。
刀は神様が遣わせてくれた使者で、神様と同等とみなされる。
そのわりに普段は、巫女の秘書的役割を担っているけれど。

「神祇翠」

祝詞が終わり、祖母が刀を手に私を振り返る。

「そなたに神の使者である刀、伶龍を授ける」

「確かにちょうだいいたしました」

両手を頭よりも上に上げ、捧げ持つように祖母から刀を受け取った。
それは、ずしりと重い。
いや、同じ刀なのだから神事で使う真剣と似たような重さのはずなのだ。
それでもそれらよりもかなり重く感じた。
これは責任の重さなのか。

刀を横に置き、座ったまま身体を半回転させて参列者のほうを見る。
改めて刀を頭上へ捧げた。

「八二一番伶龍、拝領いたしました」

おおーっと、小さく感嘆の声が上がる。
ここまではいい、問題はこの先だ。

「では、目覚めの儀を」

「はい」

祖母の声に返事をし、刀を握り直す。
また目をつぶり、気持ちを落ち着けようと大きく息を吸い込んだ。
抜けば、この刀に宿る御使いが顕現する。