「……間違い、ありません」

顔を上げ、威宗に向かって小さく頷く。

「ご開封を」

改めて木箱と対峙する。
無意識に喉が、ごくりと唾を飲み込んだ。
箱に向かう手はぶるぶると細かく震えている。
ゆっくりと箱にかかる、紫の紐を解いた。
さらに鍵穴へ手の中の鍵を差し込んだ。
そのまま、祖母を見上げる。
目のあった祖母が小さく頷き、再び箱へと視線を戻す。
目を閉じて一度、小さく深呼吸した。
覚悟を決め、ゆっくりと瞼を開く。
そろりと鍵を回すと、カチリと解錠ずる音が妙に耳についた。
慎重に蓋を開け、包んである紫の絹布ごと祖母へ捧げ上げる。

「八二一番、伶龍(れいりょう)

受け取った祖母が、刀を祭壇へと捧げ持つ。
〝伶龍〟それがこの刀の名前らしい。

……〝龍〟の字がつくとは期待できるかも。

刀の名前は打った刀匠から一字を取ってつける。
そして母の刀の名は〝蒼龍(そうりゅう)〟だった。
いや、同じ字でも違う名前や二代三代だったりする場合もあるので油断はできないが、それでも兄弟刀である可能性は高い。
だったら、母の刀のように美しい男かもしれない。

「拝領つかまつります」