途端にふっと、あれほど重かった腕が軽くなった。
毎度のことながら、不思議だ。

刀を鞘に収め、参列者に一礼して控え室へと下がる。

「はぁはぁ」

舞が終わる頃にはすっかり息が上がっていた。
それくらい、体力を使うのだ。

「これくらいで情けないね」

あとから控え室へ戻ってきた祖母がにやりと笑う。
もうとっくに還暦を過ぎているのに、祖母は私と違い息の乱れはない。
それでも額には薄らと汗が滲んでいた。

「威宗も春光もお疲れ」

祖母が刀のふたりを労う。

「花恵様も翠様もお疲れ様でございます」

彼らは私たちに頭を下げてくれた。

「これでお役御免かと思うと、少々淋しいですね」

春光が少し淋しそうに笑う。
そうか、来年は私が刀を授かり、春光の役をその彼が担うようになるんだ。

「本当に長々と申し訳なかったね」

慰めるように祖母は春光の背中を軽く叩いた。
本当は春光の役は母の刀がやるはずなのだ。
舞手だって現役巫女の祖母と母になる。
しかし母はもういない。
私が六つのとき、穢れと相打ちになって死んだ。

「いえ。
毎年、翠様の成長が間近で見られて役得でしたので」