この惨状ならどういう状況なのか理解しているのだろう。
ちなみに花恵とは祖母のことだ。

「その。
もう少し待ってくださるようにお願いしましょうか」

威宗が言いにくそうに提案してくれる。
その気遣いは大変ありがたい、が。

「んー、いいや」

曖昧に笑ってその申し出を断った。
きっとこのままではあと一時間もらおうと一週間もらおうと、永遠に決まらない気がする。
それに時間が延びれば延びるだけ、人に迷惑をかけるのだ。
だったらもう、腹を括るしかない。

「んーっと……」

目をつぶり、ゆっくりとあたりを探るように手を伸ばす。
そのうち指先にこつんとなにかがあたった。

「よしっ、これにする!」

思い切ってそれを掴み、持ち上げる。
これで鍵じゃなかったら笑うが、目を開けると間違いなく鍵を掴んでいた。
ぷらりと下がった木札には、【八二一】と書いてある。
それは私の誕生日、八月二十一日と同じ並びで、これもなにかの運命なのだろう。

「では、確かにお預かりいたしました」

「よろしくー」

私から鍵を受け取り、威宗は頭を下げて出ていった。