午後になればその準備に追われるし、もう時間がないのはわかっていた。

「うーっ。
これか?
それともこれか?」

適当に掴んだ鍵を目の高さまで持ち上げ、問いかける。
しかしそれらが、なにか答えてくれるわけでもない。

「あーっ!
わかんなーい!」

ヤケになって部屋中に箱の中身をぶちまけた。
チャリチャリンとやかましく、鍵のぶつかる音が響き渡る。

「あの……」

そのタイミングでふすまの向こうから、控えめな威宗の声が聞こえてきた。

「よろしい、ですか……?」

躊躇い気味に声をかけてくるのは、今の派手な音が聞こえていたのだろう。

「いいよー」

私の返事を聞いてふすまを開けた威宗は、ぎょっとした顔をした。
まあ、鍵が部屋中に散らばっていればそうなるよね。

「大丈夫、ですか……?」

そろりと鍵を踏まないように気をつけながら、彼が入ってくる。

「あー……。
大丈夫、大丈夫」

とりあえず笑って誤魔化しておいたが、いまさらながらこれは後片付けが大変だ……。

花恵(はなえ)様が(すい)様より選んだ鍵を預かってこい、と」

言いながら威宗の目が周囲を見渡す。