穢れを目の前にすると恐怖が甦り、身体が竦んだ。

「翠!
この俺様が守ってやってるんだ!」

私の横の手すりに、伶龍が立つ。

「外したら承知しねーぞ」

右頬を歪め、彼はにやりと笑った。

「うっさい。
ちゃんとやれるって!」

弓に矢をつがえ、かまえる。
あんなに凍りついていた身体が、動く。
伶龍のおかげだ。

放った矢は穢れ本体に命中した。
いや、あれだけ大きいのだから、外すほうが難しい。
肝心なのは次からだ。
正確に、同じところに打ち込まなければ意味がない。
再び矢をつがえ、かまえる。

「つ、ぎ……」

伶龍は私に危険がないか、当たりに目を配っている。
だったら私は矢を射ることだけに集中すればいい。

「よしっ!」

二射目が一射目と同じ場所に当たり、ばーっと蟲が散っていく。
しかしまだ、核は見えない。
本体が大きいとそれだけ、蟲の層が厚いので仕方ない。

めげずに次の矢を射る。
それでようやく、核が僅かに見えた。

「あとすこ、し……っ!」

四本目の矢をつがえる。
けれど穢れもただでやられる気はないらしく、大きな呻き声が上がった。
間近にある、穢れの足が持ち上がる。