小学校の校庭に設置された仮設テントで、弓を抱いて座り、堅くなる。

「……怖いか」

隣に座る伶龍から声をかけられ、顔を見上げていた。

「こわ……」

怖いと言いかけて、止まる。
今、それは言ってはいけない気がした。
しかし怖くないと嘘もつけない。

「大丈夫だ、あの頃の俺たちとは違う」

ぎゅっと伶龍の手が、私の手を握る。
それで身体の震えが止まった。

「……うん」

「それになにがあっても、俺が翠を守る。
だから、安心していい」

証明するかのように、伶龍の手にぎゅっと力が入る。

「うん、任せた」

それは彼に任せておけばきっと大丈夫だと、私に思わせた。

――うおおおおぉぉぉぉぉん。

そのうち遠く、穢れの唸り声が聞こえてくる。

「行くか」

「うん」

伶龍が立ち上がり、私も弓を持ってその隣に立つ。

「勝って帰るぞ」

「うん!」

私の返事を合図に、伶龍が走り出す。
私もすぐにそのあとを追った。
いくらも走らず、
そびえるように大きな穢れの本体が見えてくる。

「翠!」

「わかった!」

穢れと肉薄する、伶龍が指さすビルの外階段を駆け上がる。