事件の幕が下りて、数日が経った。
初秋の陽が穏やかに降り注ぐ午後、アンソレイエ学園の奥まった一角にある調査室では、いつもの四人が集まっていた。

机の上には、使い終わったファイルと写真。
ティリットが端末を閉じ、リベルタがコーヒーの香りを漂わせながら椅子にもたれる。

「今回は、さすがに胃が痛くなったな」

リベルタがぼやくと、ティリットが肩をすくめる。

「胃が痛くなるのは、もっとヤバいの来てからにしてくれ。今回はまだ前哨戦って気がするしな」

「え、なにその不吉な予感」

セレネが笑いながら、書類を片付けつつ続ける。

「でも、今回は誰も壊れずに済んだ。それが、何よりだと思うわ」

アルテミスは窓辺に立ち、静かに外を見つめていた。
グラウンドでは、リリアンが新たな生徒会役員とともに話し合いをしているのが見える。

「リリアンは変わった。偽りの女王じゃなく、自分の言葉で歩き出してる」

リベルタが頷く。

「そして、あのシュヴァリエもEを降りて、自分として償おうとしてる」

「人は変われるのね」

セレネがぽつりと呟いた。

ティリットは頷きつつ、すっと真顔になる。

「でも、ネットのEアカウントだけは、まだ動いてる。あれは、シュヴァリエ一人のものじゃなかったって、俺たち知ってるだろ」

一同の空気がわずかに緊張すると、アルテミスは小さく呟いた。

「影は終わってない。けれど、私たちも終わっていないわ。まだ、続けられる」

リベルタが微笑む。

「相棒の血が騒いでるな?」

「ええ、ポアロの血も、あなたのホームズの血もね」

アルテミスがいたずらっぽく微笑み返す。

その時、ティリットのパソコンがと短く鳴った。
新着の匿名メール。それは、画像ファイル1つだけが添付された無言のメールだった。

リベルタが画面をのぞき込む。

「また来たぞ。これ、学園の地下倉庫だな?」

アルテミスがすっと背筋を伸ばす。

「やっぱり、Eはまだ息をしてるのね」

セレネが苦笑する。

「平穏、長くは続かないみたい」

ティリットが軽くパチンと手を鳴らす。

「じゃあ、再結成ってことでいいな?」

アルテミスがふっと笑い、ゆっくりと宣言した。

「アンソレイエ調査部、出動しましょう」

陽射しが斜めに差し込む中、四人の影が、再び机の中央に集まる。

探偵たちの物語は終わらない、光の裏にある密やかな罠を暴き続ける限り。
いつだって、次のページは開かれていく。