――余命宣告されてからもうすぐ一年。僕は本当に症状が悪化してきている。自分でも分かるくらい息が苦しいし、確実に死が近づいているのだろう。

 ただ、辛い思いをしているのは僕だけじゃない。――僕の彼女、菜々花もたまに倒れたり、食べて吐いてを繰り返したりしている。お互いに苦しみを分かち合いながらなんとか生きている。

「……雅也くん!」

 僕が彼女の病室に行くと、菜々花はげっそりとしながらも目を輝かせ、僕の方を見た。

「ごめんね、雅也くん。もう私――」

「……言わなくて大丈夫、分かってる。菜々花は一人じゃないから」

「……そうだよね。雅也くんが隣にいると、本当に安心するなあ」

 時計の針がゆっくり動くと同時に、彼女の目はだんだんと閉じていった。

「……雅也くん、私、本当に雅也くんのことが大好きだよ。いなくなっても、ずっと」

「僕もだよ、菜々花。愛してる」

 すると菜々花は安らかに眠った。

 ――菜々花、君に出会えて良かった。僕もすぐにそっちへ行くから、少しだけ待っててね。

 僕はその途端に、深い眠りについた。





「雅也くんっ」

「……菜々花」

 ふと気がつくと、僕と菜々花が出会ったあの道端にいた。

「待ってたよ、雅也くん。来てくれるって信じてた」

「……ああ。僕も君にまた会えて嬉しい」

「……ずっと二人でいようね」

 これから先も彼女とずっとずっと一緒にいたい。例え生きている人々と住む世界が違うとしても。





 ぴーえす!

 雅也くんが入院するってなったとき、私本当に嬉しくて。雅也くんに小さい頃助けてもらったお礼に何かしてあげたいなって思って。

 私の家にあったお金を使って、雅也くんの入院費払っちゃったの。
 へへ、気づいてなかったよね?
 お金を使っちゃうくらい、雅也くんは私の命の恩人なの。とても大好きな人なの。

 まあこれは、雅也くんには言わないけどねっ!
 ……例え生きていなくたって、ずっと二人でいるって決めているんだから。
 これからも笹木菜々花の隣にいること。
 約束ねっ!

 バイバイ……ううん、またね!