お茶会の会場となっていたホールには、既にたくさんの生徒たちが集まっていた。

その中心にいるのは、母と僕の三人の兄たち。そして兄たちの婚約者。

中条学園の大学部に所属する兄たちに寄りそう婚約者たちは、いずれも容姿能力共に優れた名家の令嬢たちだ。


「すみません、遅くなりました」


遅れて会場に入った僕は、兄たちの元に駆け寄る。


「やっと来たか」

「はっ、聞くところによると今日の授業丸々サボってたらしいね。このお茶会が嫌で逃げたのかと思った」

「まあ気持ちはわかるけどな。おふくろもえげつないこと考える。あの化け物……じゃない、お前の恋人を人前に出して俺たちの婚約者と比べようだなんて。同情するぜ、翔」


三人の兄は、それぞれ好き勝手なことを言う。

それを聞いていた周囲の生徒たちからも、馬鹿にしたような笑い声が漏れる。


「それで、例の女はどこです?」


母は、厳しい口調で僕に聞いた。ホールに入ってきたのが僕一人だったからだ。


「香月ならもうすぐ来ます。準備に手間取っていたので、僕だけ先に」


数時間前、あの川原で彼女は言った。


『翔様。私……今日のお茶会に出ます。やっぱり堂々と貴方の隣にいたいです。鉢は取れたけれど、一般庶民なのには変わりないので、結局笑いものになるかもしれませんが』


僕の恋人として、皆にも認めてもらいたい。香月がそう思ってくれていたのが、僕はたまらなく嬉しかった。

だから今は、彼女を信じて待つことにした。