会いたいとは言いつつも、彼の教室に直接行くことは憚られた。それなら、思いつくあてはもう美術室しか残っていない。そしてなぜだろう、そこでなら、彼ともう一度自然に話ができるような気がしていた。


 覗いたそこには、もうすっかり見慣れた美術部の面々がいて。しかし、探していた一人の姿はどこにもなかった。

「裕ちゃん? もしかして、柊くん探してる?」

部屋に入らず、入り口に立ったまま中をキョロキョロと見回す俺に気がついた一人の女子生徒が、こちらにやってきた。

「あぁ、うん」

「あいつさ、最近来てないよ」

「ずっと?」

「うん。あの火事のあと、みんなで片付けした日から。裕ちゃん、直接聞いてないの?」

「あぁ、うん。ちょっと色々あってさ。話せてないんだ」

「……何か伝えとく?」

俺の様子に何かを察した目の前の彼女が、そう聞いてくれる。確か彼女は、柊と同じクラスだったはずだ。

「いや、大丈夫。あいつには、俺がここに来たこと言わないで」

「そっか。……うん、分かった。何があったか知らないけど、早く元通りになるといいね」

「ありがとう」

それからも何度か美術室へ顔を出したけれど、そこに柊の姿を見つけることは遂になかった。