「ストラップ、結局見つからなかったね……」

本当なら残された今日で大詰めをする予定だったけど、もうそんな気にもなれないので、私は早くこの捜索を打ち切りたくて、早々に諦めの言葉を吐く。

「……今日はごめんね。日中探すつもりだったけど、ちょっと用事が出来て……」

その中でも、相馬君にはいい顔を見せたくて、我ながら何とも醜いなと思いながら私は白々しく嘘を言う。

「気にしないで。そこまで朝倉さんを巻き込むつもりはないから。むしろ、ここまで僕の我儘に付き合ってくれて本当にありがとう」

そんな私の気持ちなんて知る由もない相馬君は、軽く首を横に振り、相変わらずの優しい笑みを見せてくる。
それが余計良心に突き刺さり、私は相馬君に視線を合わせないまま隣へと立った。 


本来なら相馬君に今日の出来事を伝えるつもりだったのに。
家族のことや、相馬君の体に反応があったこと。

そして、瀬川さんのことも。

あの場に居合わせる事が出来ない相馬君の為にもと、あれだけの強い思いで病院まで乗り込んだというのに。

それなのに、あれから私の気持ちは狂い始めて、今はもう話す気になれない。


「……ねえ、相馬君。もしストラップが見つかったとして、瀬川さんには一体何を伝えようとしたの?」

とりあえず、物が見つからない以上この謎は解けないままなので、私は恐る恐る相馬君に尋ねてみる。

すると、相馬君の表情が急に曇りかがり、視線を足下へと落とした。

「……うん。もういいんだ」

そうポツリと呟く相馬君の瞳は気付けば光を失っていて、焦点が朧げに見える。

「結局、僕は彼女に何も出来なかった。……ただ、それだけの事だから……」

それから苦しそうに話す相馬君の言葉の意味が、私にはよく分からなかった。