「ここで会うなんて奇遇だね?」

相変わらず落ち着いた口調でそう尋ねてくる相馬君。

「……あ、う、うん。ちょっと職員室に。ストラップ届いてないか先生に聞いてきたんだ。でも、ダメだった」

私は少しぎこちなく答えると、もう一度相馬君の顔色を確かめるように伺う。

「そっか。そこまでしてくれてありがとう」

けど、何も変わらない彼の様子に、先程見たものは気のせいだったのだろうかと密かに首を傾げた。

「やっぱり、失くし物を探すって結構難しいよね。そう都合良く見つかるものでもないし。君にあれだけ頼んでおいてなんだけど、これだけ探してもなければ、もう諦めるしかないのかな……」

すると、昨日とは打って変わり、急に投げやりな態度を見せてくる相馬君に、私はかちんときて眉間にシワを寄せる。

「何それ?他人をここまで巻き込ませておいて随分と勝手な言い草ね。それに、何だかんだ言ってもあなたがこうしてここに現れる限り、まだ諦めていない証拠でしょ。戯言なんて聞きたくないわ」

そして、吐き捨てるようにそう言い放つと、突然声高らかに相馬君が笑い出した。

「相変わらず朝倉さんって容赦ない人だね。お陰で気合いを入れ直して貰った感じかな?」

それから皮肉を混じえながらも満面の笑みを向けてくる相馬君に、不覚にも私は頬に熱を帯びていく。