「気付いたら立ってたってどういう事?そういえば、日中は全然姿が見えなかったけど。もしかして、相馬君が現れるのって時間が決まってるの?」

私は尚も苦虫を噛み潰したような顔で引っかかった部分を指摘すると、相馬君は視線を自分の足元に向けて考え込むように少し唸った。

「どうやらそうみたいだね。昨日も例のストラップを探していてたら、突然意識がプツって切れて気付いたら今ここにいるみたいな?それまでの記憶は全くないし、おそらく僕がこうして霊体でいるのは限定的のようだね」

そして、相変わらず他人事のように冷静に分析をする彼を見て、私は気付かれないように小さく溜息を吐いた。

とりあえず、今は遅れを取り戻そうと作業に集中する為、落ちた筆を広い上げると、相馬君には構わずキャンパスに色を塗っていく。

「そういえば、ストラップは見つかった?」

そんな私の絵を興味深げに眺めながら、なに食わぬ顔でさらりと問いかけてくる相馬君。

「見つかったら先ず報告するでしょ」

我ながら捻くれてるなと思いながらも、私は素っ気なくそう返答すると、自分の事なのにあまり関心を示さない様子で、相馬君は「そっか」と一言だけ返した。