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それから月日が流れ、屋上の風景を描き終えた私は、次なる校舎内の気に入った場所を見つけて、そこに座り絵を描き始める。

高校入学してからずっと続けている、校内コレクション。
二年も続ければそれなりに数は集まってきてはいるけど、まだ描いてみたい場所が幾つかあって、この作業も暫くは続ける事になるだろう。

いつものようにデッサンした鉛筆の上から、思い思いの色を塗っていく。

「……やっぱり、由香里の色遣いって好きだな。本当に温かい絵だよね」

その間、バイトがない日はこうして少しだけこの時間に付き合ってくれる相馬君。

相馬君が霊体の時も私の絵が好きだと言ってくれて、それは今も変わらず彼はこうして優しく褒めてくれる。

それが嬉しくて、私は褒められる度に舞い上がる気持ちを抑えながら作業に集中する。

すると、ある名案が思い浮かんだ。

「それなら、今度悠介君描いてあげようか?最近人物画も挑戦してみたくなったんだ」

何度か練習を重ね、そろそろ形になってきたところだし、彼をモデルにすればもっと一緒に居られる時間が増えるかもしれない。

私は期待に胸を膨らませて、目を輝かせながら、彼の返答を待つ。

「本当に?……ちょっと恥ずかしいけど、それなら次回作はそれでお願いしようかな」

相馬君も照れつつも満更ではない様子で、満面の笑みを私に向けてきた。




__こうしてゆっくりと流れる、穏やかで優しい時間。


やっぱり、一日の中でもこのひと時が私にとっては一番待ち望んでいるもので“特別”だと思える瞬間。

ここが私の居場所であり、ここが一番幸せになれる場所。

そんな気持ちを噛み締めながら、今日も私は満たされていく。


放課後、君のとなりで__。



~~完~~