気付けば体が勝手に動いていた。

どこまでも人の事ばっかりで、どうしようもなく優し過ぎる彼が憎らしくて。

やりきれない思いに、私は彼の首元に勢い良く抱き付く。

そして、そのまま相馬君の唇に自分の唇を重ねた。

それから、まるで時が止まったかのように、静寂な時間が私達の間に流れる。

少し息苦しさを感じ始めた私は、相馬君から唇を離したところで、今自分がしてしまった大胆過ぎる行為をようやく認識する事が出来た。

再び暴れまくる私の心臓。
またもや全身湯気が出そうな程に熱くなり、相馬君も目を点にして顔を真っ赤にしながら私を凝視して固まっている。

本当なら、余りの恥ずかさに今直ぐにでもここから逃げ出したいけど、でも、これだけは絶対に伝えたくて、私はそこを何とか堪える。

それから相馬君の首元に抱きついたまま、私は真剣な目で彼の瞳を見つめた。

「お願い、怖がらないで。私は、相馬君に触れられると幸せな気持ちしかないの。だから、もっと沢山触れて欲しい。相馬君は私の救世主なんだから」

もうここまで来てしまえば、恥じらいなんてどうでもいい。

彼にちゃんとこの気持ちが伝わるのであれば。

まだ、苦しむ彼の心を少しでも和らげる事が出来るのであれば。


どんなにらしくない事でも、私は惜しみなく、彼に与え続けたい。