「おい忍、あんまし余計な事喋るんじゃねぇよ」
「あ、すんません」
「とにかく、俺はもう帰るから、忍から連絡頼むよ。俺はコイツ送ってくから」


 あまり詳しく聞かれたくないのか、忍に余計な事を話すなと釘を刺した斗和は、心配しているという仲間への連絡を任せ、自分は恵那を送っていくと口にする。


「え? いいよ、送ってもらわなくても……それより早く病院に行って傷、診てもらってよ」
「そんな怪我して送るのは大変だろうし、恵那さんは俺が送っていきますから、斗和さんは早く帰ってください」


 そんな斗和の言葉に、恵那は送るくらいなら病院に行けと言い、忍は自分が恵那を送ると言い出した。

 けれど、


「いや、送るのは俺が適任だから忍は気にすんな。お前も帰り、気をつけろよ。恵那、帰るぞ」


 斗和が恵那を送るのには何か理由があるようで、忍の申し出を断り恵那には有無を言わさず共に帰るよう声を掛けると、二人はそれ以上何も言う事をせず、素直に従った。



「ねぇ、私の事は大丈夫だから、病院に行ってよ……」


 忍と河川敷で別れ、自宅のある方角へ向かって歩き出す二人。

 いつの間にか雨は止み、綺麗な夕焼け空が広がっている。


「ねぇってば、斗和、聞いてる?」


 話し掛けても無反応な彼に今一度名前を呼んで問い掛けてみると、


「お前、じーちゃんばーちゃんと住んでるだろ?」


 突然、そんな質問をされた恵那の頭上にはハテナマークか飛び交った。


「何、突然? まあ、そうだけど。っていうか、どうして知ってるの? 私、そんな事話した覚えないけど……」
「俺、今お前が住んでる家の隣に住んでんだよ。ジジイと一緒に」
「え!? そうなの!?」
「まあ、隣って言っても、田んぼ挟んでっから多少距離あるけどな。少し前にジジイが、隣の孫娘が暫くこっちに住む事になったとか言ってて、それがお前だって思い出したんだよ。苗字違うから初めは分からなかったけど」
「そうだったんだ。あ、苗字違うのはこっちの祖父母は母方だからだよ」
「ああ、それで。つー訳で、どうせ帰る方角同じだから送るって言ったんだよ」
「そっか、それなら納得」


 わざわざ二度手間になるような事をさせる訳じゃないと分かった恵那は安堵の表情を見せると共に、斗和がお隣さんだと分かり、密かに心強さを感じていた。