「それはそうと忍、お前俺に何か用があったんじゃねぇの?」


 そもそも、忍が自分を探していた目的は何なのかを斗和が確認すると、


「用っていうか、斗和さん全然連絡つかないからみんなで探してたんですよ! 【BLACK CROSS】の連中に健太(けんた)が捕まった上に助けるなら斗和さん一人だけだと名指して呼ばれたってメッセが来て、その後健太が助かった事は本人からのメッセで分かったけど、途中で別れたっていう斗和さんに呼び掛けても音沙汰無いし、電話も出ないし……心配したんすよ?」
「悪ぃ、連絡しようと思ってたんだけど、ちょっと疲れて休憩してたんだよ……」
「まあ、無事で良かったですけどね。ひとまず俺の方からみんなに連絡しますよ」
「ああ、頼むわ」


 そんな忍と斗和のやり取りを黙って見守っていた恵那は、話が一区切りつきそうなタイミングを見計らって声を掛ける。


「あの、その話って、もしかして昼間用事があるって帰った事と、関係があるの?」
「あー、まぁな」
「……誰かと喧嘩してたって、事でしょ?」
「色々あんだよ。こっちにも事情が」
「でも……そんな怪我する程の喧嘩なんて……良くないよ。しかも、一人で何人も相手にしたって事でしょ?」


 二人の会話から推測した恵那は斗和が一人で危険なグループの人間相手に喧嘩をしたと解釈し、その事を問いただしていると、


「恵那さん、今日は仲間の一人が捕らえられてしまって、それを助ける為の喧嘩だったから斗和さんがここまで怪我を負っただけ。普段の斗和さんなら、怪我なんて負わないくらい強いんですよ!」


 忍が、どこか勘違いをしている恵那に補足して斗和がここまでの怪我を負った経緯を説明をした。