「じゃ、行くかぁ」

…え、待って何もできない。なんで?

「できないな、なんでだろ」

「あ~~ヤッバいこれ無理したら体痺れるんだけど。あぁ痛っ!助けてっ」

姉さんめっちゃ笑ってるじゃないですか。元気そうでなによりです。

「な~にを廊下で突っ立ってんですか?」

「おぉ稜音(たかね)くん」

そっか忘れてたけどここ廊下じゃん。

小室(こむろ)稜音(たかね)くんは年上だけど兄・姉とは誰も呼ばない。性別は女だけど、男に見えるような格好をしていて、性別を知られないようにするために名前で呼んでくれと頼まれている。

稜音くんは黄緑色の髪色で白色の目をしてて、下の方でくくった髪を肩からさげている。なんか、何て言うんだろ。外国の貴族の男性の髪長い人がしてるみたいな感じ。そして、黒マスクをして性別を分かりにくくしている。

「お、稜音~。どしたん朝からいるなんて珍しいね」

「ん、指示出たんですよ」

空気がピリッとしたものに変わる。

私たちは好き勝手に好きな本の世界線に入り込んでいるが、ときにはクロスオーバーさせて好きなキャラ同士の会話を聞いたりしていている。

でも、私たちの好きな本は何百冊もある。ちょっとずつ混ぜてたら時間がかかりすぎる。そこで、小室本家にてパーティーをするという名目で世界線を違和感がないように混ぜる機会を何度もつくっている。

だがそのパーティで、キャラが別の本のキャラになにか悪影響を与えてしまってはいけない。

だから、私たち小室家のパーティーに参加してもいいような人物かどうかの見極めをすることになっている。で、その見極めをする役が祖母の愛美さんだ。ちなみに愛美さんは小室家のトップで、愛美さんが言うことは絶対。

さっき稜音くんが言った『指示』というのは、その見極めのためのお迎え役をすることだ。


「へぇ~どこ行くの?」

「僕は結構嬉しいですけどね。『ナナコイ』です」

「あ、行く」

『ナナコイ』とは、『七色の空に恋を描く夢を』という学園恋愛ものの略称だ。

最初に学校を何股もしていると言ったけど、それは様々な世界線での学校に所属しているということだ。まぁ、リアルでもいろんな学校行ってるけど。

なんで行くと即答したのかというと、『ナナコイ』の主人公の女の子が見た目も性格もかわいくて癒しになるから。久しぶりに会いたいんだよね。


「私も行く!私のみくちゃんマジ会いたい!!」

待て待て待て。私の??違うだろ。そして姉さんは行くな。マジで。

「止めてもどーせ聞く耳持たないんだよなこういうときって。うわやべぇクッソ腹立つんだが」

翼彩兄さん、聞こえてます。

「女の子大好き人間の碧姉さんはマジ絶対に行くな。女の子側だって絶対迷惑だってマジ」

「う~ん稜音?聞こえちゃってるよ??」

「わざとですけど」

「うわ腹立つなぁ」

こんな会話をにこにこ笑顔でしないでください倍怖いッス。

「はーいじゃあこの4人で『ナナコイ』れっつごーー」

棒読み…。
はーーい、れっつごーー。