「ま、待ってください! 全員クビっていうのは……」
「言葉の通りだ。魔法技術製造局は全員クビだ」
食い下がろうとするエルヴィンに、事もなげに言い返す国王アルフレート。
「し、しかしながら陛下……我々の仕事は軍の武器はもちろん、国王中に流通するあらゆる魔法製品の製造を一手に引き受けている、言うなれば公共事業の一つです。それをいきなり全員クビにするというのは」
「それなら問題ない。すでに大商人のニコラスに話はつけてある。貿易で扱っている商品を王国として買い取ることになった」
国王アルフレートは自信あり気に、ふんっと鼻を鳴らす。
「そんな……」
エルヴィンとエリスは、あまりのショックに言葉を失った。
アルフレートは、先代の国王が突然亡くなり、急遽その王位を継いだ王家の次男坊だ。
魔法学院を卒業して五年、若くして魔法技術製造局の局長に登り詰めたエルヴィンだが、アルフレートはさらに若い。
まだ十代で、国の仕事などほぼしたことがないはずだ。
何の予告も無しに、王国管轄の局を全員リストラするなんて、常識はずれにも程がある。
しっかりと熟考されたうえでの政策決定なのだろうか……?
「王国内の必需品を、一商人、それも他国からの貿易に頼るというのですか⁈ それはあまりにも危険です!」
「うるさいな。たかが技術者が、国王である我に意見するのか?」
煙たがるように、こちらの抗議を一蹴する国王アルフレート。
「魔法技術製造局は、軍人魔法師にも回復魔法師にもなれなかった、落ちこぼれの集まりだと聞く。そのくせに資金だけは湯水のように使って、何の成果も上げられていないじゃないか」
「そ、それは……」
魔法技術製造局の仕事は地味で、決して表舞台に立つことはない。
魔法に詳しくない人物からしたら、全く何をしているのか分からない部署であるというのは事実だった。
「しかし、我々は確実に王国の基礎を支えている自負がありーー」
「悪あがきはやめましょう、エルヴィン局長。みっともないですよ」
突然、国王アルフレートの背後から姿を現した男。
「あ、あなたは」
「平民のお前らも顔くらいは知っているだろう」
そう、この男こそ、この国一番のやり手と名高い、大商人ニコラスだった。
「私が仕入れる商品は、どれも品質は一級品で価格も安い。それはひとえに私の流通ルートがあればこそ。金だけかかる時代遅れの魔法技術とはレベルが違うのですよ」
「はは、その通りだな」
大商人ニコラスと国王アルフレートは、顔を見合わせて笑う。
すでに二人の関係は蜜月のようだった。
「とにかくこれは決定だ。先代国王の政治はとにかく無駄が多かった。経費削減が必要なのだ。これから王国内の魔法用具については、大商人のニコラスに全て一任する。魔法技術製造局は解散、以上だ!」
そう言うや否や、口答えも許されぬまま、エルヴィンとエリスは王室を叩き出されてしまった。
「こりゃ参ったな……」
「エルヴィン局長、本当に我々解散させられちゃうんですかね」
気を落としながらトボトボと並んで歩くエルヴィンとエリス。
「国王の決定は覆らないですし……なんとかなるようにやってみます」
エルヴィンは国の行先を案じて、深いため息をついた。
「言葉の通りだ。魔法技術製造局は全員クビだ」
食い下がろうとするエルヴィンに、事もなげに言い返す国王アルフレート。
「し、しかしながら陛下……我々の仕事は軍の武器はもちろん、国王中に流通するあらゆる魔法製品の製造を一手に引き受けている、言うなれば公共事業の一つです。それをいきなり全員クビにするというのは」
「それなら問題ない。すでに大商人のニコラスに話はつけてある。貿易で扱っている商品を王国として買い取ることになった」
国王アルフレートは自信あり気に、ふんっと鼻を鳴らす。
「そんな……」
エルヴィンとエリスは、あまりのショックに言葉を失った。
アルフレートは、先代の国王が突然亡くなり、急遽その王位を継いだ王家の次男坊だ。
魔法学院を卒業して五年、若くして魔法技術製造局の局長に登り詰めたエルヴィンだが、アルフレートはさらに若い。
まだ十代で、国の仕事などほぼしたことがないはずだ。
何の予告も無しに、王国管轄の局を全員リストラするなんて、常識はずれにも程がある。
しっかりと熟考されたうえでの政策決定なのだろうか……?
「王国内の必需品を、一商人、それも他国からの貿易に頼るというのですか⁈ それはあまりにも危険です!」
「うるさいな。たかが技術者が、国王である我に意見するのか?」
煙たがるように、こちらの抗議を一蹴する国王アルフレート。
「魔法技術製造局は、軍人魔法師にも回復魔法師にもなれなかった、落ちこぼれの集まりだと聞く。そのくせに資金だけは湯水のように使って、何の成果も上げられていないじゃないか」
「そ、それは……」
魔法技術製造局の仕事は地味で、決して表舞台に立つことはない。
魔法に詳しくない人物からしたら、全く何をしているのか分からない部署であるというのは事実だった。
「しかし、我々は確実に王国の基礎を支えている自負がありーー」
「悪あがきはやめましょう、エルヴィン局長。みっともないですよ」
突然、国王アルフレートの背後から姿を現した男。
「あ、あなたは」
「平民のお前らも顔くらいは知っているだろう」
そう、この男こそ、この国一番のやり手と名高い、大商人ニコラスだった。
「私が仕入れる商品は、どれも品質は一級品で価格も安い。それはひとえに私の流通ルートがあればこそ。金だけかかる時代遅れの魔法技術とはレベルが違うのですよ」
「はは、その通りだな」
大商人ニコラスと国王アルフレートは、顔を見合わせて笑う。
すでに二人の関係は蜜月のようだった。
「とにかくこれは決定だ。先代国王の政治はとにかく無駄が多かった。経費削減が必要なのだ。これから王国内の魔法用具については、大商人のニコラスに全て一任する。魔法技術製造局は解散、以上だ!」
そう言うや否や、口答えも許されぬまま、エルヴィンとエリスは王室を叩き出されてしまった。
「こりゃ参ったな……」
「エルヴィン局長、本当に我々解散させられちゃうんですかね」
気を落としながらトボトボと並んで歩くエルヴィンとエリス。
「国王の決定は覆らないですし……なんとかなるようにやってみます」
エルヴィンは国の行先を案じて、深いため息をついた。