「エルヴィン局長、アルフレート国王の呼び出しって……」
「ええ、十中八九、僕たちの進退についてでしょうね」
エルヴィンは部下のエリスとともに、王室の扉の前に並んだ。
「魔法技術製造局、局長のエルヴィン、副局長のエリス、入室致します!」
扉の前に立つ警備の騎士が、王室に向けて高らかに叫ぶ。
エルヴィンはこれから下されるであろう若き国王からの宣告について考えながら、深いため息をついた。
ーーーーー
「今回の魔法試験も落第ギリギリかぁ……」
試験結果の成績表を眺めながら、エルヴィンはため息をつく。
このハンメル王国では、魔法の素養がある者は魔法学院に通い、卒業後はそれぞれの適性に合った職業につく。
卒業生は主に戦闘魔法師として軍人になることが多く、次に回復魔法師として医療従事者になることが多い。
しかし残念なことに、エルヴィンにはそのどちらにも適性がなかった。
「ーーツイてないなぁ」
そのため魔法学院での成績も最低レベル。
落ちこぼれながらも、落第しないように食らいつくので必死だった。
「卒業しても、ろくな仕事に就けないかもなぁ」
攻撃魔法や防御魔法、さらには回復魔法にも適性がない自分には、この国で活躍できる場は少ない。
暗雲たる心持ちで学生生活を過ごしていたが、そんなエルヴィンにも唯一適性のある魔法があった。
「この魔法付与〈エンチャント〉を使って、なんとか仕事にありつけたら良いけど」
そう、エルヴィンに適性があるのが魔法付与〈エンチャント〉。
刀や盾といった武器、果ては農耕器具や生活用品などあらゆる道具に魔法の効果を付与し、性能を高める魔法技術だ。
軍隊や医療には及ばないが、この国でも一定の需要がある仕事。
エルヴィンが魔法の才能を生かして生きていくためには、この道に進むしか無い。
そんな事情から、エルヴィンは学生時代から独自に魔法付与〈エンチャント〉の研究を一人で進めていた。
「魔法付与〈エンチャント〉なんて地味な魔法、よく好き好んで研究できるよな」
「まあ、落ちこぼれ君にはお似合いなんじゃね?」
クラスメイトから嘲笑の目で見られ、時に蔑まれながら、エルヴィンは一人孤独に研究を続けた。
「やぁ、君がエルヴィン君だね。噂は聞いてるよ。ひたすら自分の研究だけしている、学院の落ちこぼれらしいじゃないか。」
「は、はぁ」
最低の成績で魔法学院を卒業したエルヴィンは、すったもんだの後に王国の『魔法技術製造局』になんとか就職することができた。
働き始めた初日。
エルヴィンは同僚たちに囲まれると、いきなりそんな言葉を言い放たれた。
ーーツイてない。
そう呟きかけた、その時だった。
エルヴィンが答えに窮していると、目の前の若い男性はニヤリと笑って、手を差し伸べた。
「君のような変わり者は、大歓迎だ。僕はエリス。ここは落ちこぼれ魔法師たちが集まる部署だ。仲良くやろう」
周りの同僚たちが、満面の笑みで手を叩き、喜びの声をあげた。
エルヴィンはその暖かい空気に驚き戸惑いながらも、
「よ、よろしくお願いしますっ!」
差し出されたエリスの手を、両手で強く握り返す。
魔法技術製造局。
ずっと孤独で、居場所のなかったエルヴィンに、初めて出来た仲間たちだった。
ーーーーー
「エルヴィンだっけ。うん、お前らは全員クビだ」
若き国王、アルフレートは玉座に腰掛けたまま、まるで挨拶をするように軽く言い放った。
ーーツイてない。
そんな言葉が、エルヴィンの喉から漏れかけた。
「ええ、十中八九、僕たちの進退についてでしょうね」
エルヴィンは部下のエリスとともに、王室の扉の前に並んだ。
「魔法技術製造局、局長のエルヴィン、副局長のエリス、入室致します!」
扉の前に立つ警備の騎士が、王室に向けて高らかに叫ぶ。
エルヴィンはこれから下されるであろう若き国王からの宣告について考えながら、深いため息をついた。
ーーーーー
「今回の魔法試験も落第ギリギリかぁ……」
試験結果の成績表を眺めながら、エルヴィンはため息をつく。
このハンメル王国では、魔法の素養がある者は魔法学院に通い、卒業後はそれぞれの適性に合った職業につく。
卒業生は主に戦闘魔法師として軍人になることが多く、次に回復魔法師として医療従事者になることが多い。
しかし残念なことに、エルヴィンにはそのどちらにも適性がなかった。
「ーーツイてないなぁ」
そのため魔法学院での成績も最低レベル。
落ちこぼれながらも、落第しないように食らいつくので必死だった。
「卒業しても、ろくな仕事に就けないかもなぁ」
攻撃魔法や防御魔法、さらには回復魔法にも適性がない自分には、この国で活躍できる場は少ない。
暗雲たる心持ちで学生生活を過ごしていたが、そんなエルヴィンにも唯一適性のある魔法があった。
「この魔法付与〈エンチャント〉を使って、なんとか仕事にありつけたら良いけど」
そう、エルヴィンに適性があるのが魔法付与〈エンチャント〉。
刀や盾といった武器、果ては農耕器具や生活用品などあらゆる道具に魔法の効果を付与し、性能を高める魔法技術だ。
軍隊や医療には及ばないが、この国でも一定の需要がある仕事。
エルヴィンが魔法の才能を生かして生きていくためには、この道に進むしか無い。
そんな事情から、エルヴィンは学生時代から独自に魔法付与〈エンチャント〉の研究を一人で進めていた。
「魔法付与〈エンチャント〉なんて地味な魔法、よく好き好んで研究できるよな」
「まあ、落ちこぼれ君にはお似合いなんじゃね?」
クラスメイトから嘲笑の目で見られ、時に蔑まれながら、エルヴィンは一人孤独に研究を続けた。
「やぁ、君がエルヴィン君だね。噂は聞いてるよ。ひたすら自分の研究だけしている、学院の落ちこぼれらしいじゃないか。」
「は、はぁ」
最低の成績で魔法学院を卒業したエルヴィンは、すったもんだの後に王国の『魔法技術製造局』になんとか就職することができた。
働き始めた初日。
エルヴィンは同僚たちに囲まれると、いきなりそんな言葉を言い放たれた。
ーーツイてない。
そう呟きかけた、その時だった。
エルヴィンが答えに窮していると、目の前の若い男性はニヤリと笑って、手を差し伸べた。
「君のような変わり者は、大歓迎だ。僕はエリス。ここは落ちこぼれ魔法師たちが集まる部署だ。仲良くやろう」
周りの同僚たちが、満面の笑みで手を叩き、喜びの声をあげた。
エルヴィンはその暖かい空気に驚き戸惑いながらも、
「よ、よろしくお願いしますっ!」
差し出されたエリスの手を、両手で強く握り返す。
魔法技術製造局。
ずっと孤独で、居場所のなかったエルヴィンに、初めて出来た仲間たちだった。
ーーーーー
「エルヴィンだっけ。うん、お前らは全員クビだ」
若き国王、アルフレートは玉座に腰掛けたまま、まるで挨拶をするように軽く言い放った。
ーーツイてない。
そんな言葉が、エルヴィンの喉から漏れかけた。