「愛彩!!止まって!!そっちは行ったらダメなの!もう一つの道の方を歩くの…ってどうしよう!!」
やってはいけないことをしてしまった。どうしよう。愛彩はとっても意識が飛んでいる感じだったけど。こんなミスなんて初めて…ではない。一度だけあった。あの子は?愛彩ととても似ている。髪を下ろしていて。つやつやの焦げ茶色の髪をしていたような。誰だっけ。私の名前もくれたのに。字が同じって言っていた…!み…みよ!!美代だ!!なぜか思い出してみると涙が出てきてしまった。雨のしずくが落ちてくるように。日向美代。一番仲良くしてくれた。こんな私でも。最後はずっと一緒にいたい!と言われたのにもかかわらず、いられなかった。あの子は若くして亡くなってしまった。幼い二人を残して。「美葉、二人をよろしくね…こんな私のようにはならないように守ってあげて。お願い。あと、願いをかなえてくれてありがとう。好きな人と一緒に亡くなれることも幸せよね。ほんとうにありがとう。じゃあね。」と言葉を残して空へ消えていった。私が。どうにかなっても助けなきゃ!!愛彩を。あのとても泣いた日を忘れない。今まで一番悲しかった。命をかけてでも。美代の願いなら…かなえるって決めたから。今の私に出来る事って?この実力で出来る事って?できなくてもいい。実力がなくても意志があればいいんだよ。なぁんて。美代が言ったことを信じたらできた。今も。きっと。大丈夫。美葉も愛彩の後を追いかけるかのように、まぶしすぎて目を開けられない光の中へ。駆け抜けていく。
「美代。見ていてね。私が愛彩を守る。きっと。だから。ずっと見ていて。応援してくれると嬉しい。お願いね。」
美代とおそろいのペンダントに話しかけてみる。美代がくれた。
「聞こえなくても。思いがつながっているから。私は。どんな風になってもいいからね。思いが通じてくれれば…ね。」
久しぶりにこんなにも『やる気』というのかわからないものを取り戻した。胸の中が、心の中が、全身が、燃えるような感じに覆われる。ひんやりとした真っ暗なこの廊下。いつもはとても怖いけど。何度も見慣れているのに。美代がいるから。
「美代!ありがとう。これで私、がんばる。」
自然と笑みがこぼれていく。私って幸せなのかも。美代のおかげ。美代が私を初めて笑顔にしてくれた日。今日と同じ。そのものだね。ほわほわしている心へと変わる。不思議な感じ。あの時と同じ。この日をずっと待っていた私に勇気をくれる。私の目の前に、私の横で、美代と手をつないでいるよう。二人で。今回のミッションもやり遂げよう。いや、三人で。生きて帰ろう。犠牲になるなら私。覚悟なんて決まっている。美代がなくなった時も。人を救った。それは言ってはいけないといったけど、人を救ったせいで、自分たちが事故にあって死んだのと同じみたいに。いつもは怖い暗闇のこの廊下。そんなことを思っていたら、通り過ぎていた。はじめて、怖がることなく、怯えもしないで。