中学時代。仲の良い男友達がいた。くだらないことばかり話して、それが意外と楽しくて、一緒にいると気が楽で。自然体でいられた。
 いつからか、そんな彼のことを気になりだすようになって、そこから好きになるのはあっという間だった。
 でも、好きだと伝える勇気がなかった。振られることよりも、この関係が崩れてしまうのが、怖かったから。
 段々と近づく卒業式。お互い別々の高校への進学が決まっていた。今より接点はなくなる。話すことだって減ってくる。
 嫌だと、思った。話せなくなるのも、声を聞けなくなるのも。

『あのさ……好きなんだよね、律のこと』
 卒業式当日。校舎裏で告白した。もちろんダメ元だった。
 そしたら、奇跡が起きた。
『うん、俺も』
 恥ずかしそうに、照れくさそうに答えた。あの姿を今でも覚えてる。
 嬉しくてたまらなくて、泣きそうなくらい幸せだった。
 春休み、たくさん遊んだ。いろんなところに行って、くだらないことで笑い合って楽しかった。

 そんなとき。

『お互いちゃんと言いたいこと言わなきゃ他校だと、すれ違って距離ができて、結局別れるはめになるよ』

 お姉ちゃんが私に言った。

 でも、私は大丈夫だと思った。

 絆があれば、どんなことでも乗り越えられると信じてた。

 ──そう思って、疑わなかった。