《水瀬 由枝子さん22歳が先月末より行方が分からなくなったと、水瀬さんの母親から通報があったことが新たに分かりました。水瀬さんは、春那 所以子として、デビュー作『空虚』で20××年度の文芸大賞を受賞し、圧倒的な透明感と豊富な表現力により若者を中心に共感度100%を得ていました。今後の活動も期待されておりましたが、受賞以降関係者とは連絡が取れなくなっていたとの情報が入っており、現在も捜索が続いています。また、同居していた交際相手と見られる男性の行方も分からなくなっています。ネットでは、『空虚』​は春那 所以子の実話だったのでは無いかと波紋の声が広がっており─────……》














​──ブチッ。音が途絶えた。


水曜日の昼下がり。テレビ画面を突然真っ暗にした女は、俺と一度目を合わせると、何も言わずフッと笑った。それから流れるままに目を逸らし、目の前で湯気を立てる珈琲を嗜んでいる。一瞬の瞳が彼女の感情を物語っていた。やったね、してやったよ、私たち。その瞳が、確かに訴えていた。