聖なる花、聖なる花。
 それは妖魔から民を守り、癒しを与える安らぎの花。

 藤、蓮、菊、椿。
 これら四つは『聖花(せいか)』と呼ばれ、花家紋の象徴であり、妖魔を祓う力があった。

 妖魔とは、古来より存在する災いの種である。
 姿形は千差万別。共通しているのは黒い霧のような『邪気』を纏っているということだった。

 そして聖花の強大な力を授かるのは、花家紋の長である『花守(はなもり)』である。
 その庇護を受ける民は、尊き花の一族を敬い、常日頃から感謝の祈りを込めている。

 聖花、花家紋、花守。
 これらは一つたりとも東花の国に欠けてはならない。

 しかし、ここで一つ気づかねばならない。
 癒しを与え、民の安寧のために身を削る花守たち。

 彼らが国を、民を癒すというのなら。

 常に妖魔の脅威を、邪気の恐怖の傍にある彼らの傷を癒す存在は、どこにあるのだろうか。