「待っでグダサイごの身寄りのない可哀想な堕天使のハナジだげでも!!」

 雷太のお腹辺りを抱き抱えながらズルズルと引きずられ、滝のような涙を流す。

「うるせえな! こあ、今日は許す」
「分かりました」

 どこからともなく出された小型の拳銃の先を歩きながら何のためらいもなく向ける。
 突拍子もない命の終わりの宣言をされてるような恐怖はあったが頑なに腕を離さなかった。
 結局そのまま山を完全に降りてしまった兄弟とよく分からない一人、仕方なく雷太は訳を聞く。

「よくぞ聞いてくれました! 訳を説明すると……」

 聞いてないがな。
 こあは内心思いつつも喉から出る直前で止める。
 名前は「ツカサ」と言い、天界で天使として女神様に支えていた者だったらしく、突如理由の説明もなく能力を奪われ堕天されてしまった。
 その流れで下界に落とされてしまうも、自慢? の石頭でどうにか生き延びたと本人は謳う。
 堕天した割には天使っぽいイメージだし、でも見た目はちゃんと堕天してるような不思議な感じがある。

「なるほど」
 うんうんと頷きながらその右手は不自然にツカサの方へ伸ばす。
 まさに、こあが武器の手入れをしているほんの一瞬を狙った巧妙さ。

「あの、何をなさってるのですか……?」
「これは文化とかそういうやつだ、気にするな」
「は、はい」

 胸を揉んでいるではないか。何をやっているんだ雷太!
 これはやられたとナイフを雷太へ放り投げるも華麗に回避。左手で柄をキャッチしつつ地面へ投げ突き刺す。

「俺も学んだからな。安易に受けたりしないぜ」
「このクズにい!」
「知ってる!」

 文化とやらをして満足したのか手を離し、阻止出来なかったという敗北を期したこあは悔しそうにそっぽを向く。
 とてもと言うほどのご満悦で妹の頭を撫で回すがこれは愛情ではなく煽り行為にしかならず、無言で腹に拳を入れられる。
 幼い女の子といえど歴戦をくぐり抜けた猛者、鈍い音が響きメキメキと音を立て一瞬で兄の意識を飛ばす。

「ツカサさん。こいつの言う事を間に受けてはいけません」
「そんな、このお方好みですので良かったです……えへへ」

 目をギョロリと開けて一歩後退り、こんなやつを目の当たりにして好きと言う女などいるはずないと確信していたので持っていたエメラルドを落とした。
 すぐに近寄って拾って眩しい笑顔で元に戻すように返す。

「ありがとう、ございます」

 本当に? 好きなのか? ずっと疑念が回るが、ふとある魔女の背中が脳裏に浮かんである言葉を思い出した。
 世の中には「色んな人」がいて「色んな好み」がある。こあちゃんもきっと沢山見ていくだろうね。と。

「ツカサさん!」
「はいー!」
「弟子にしてください!」