まるで巨大なコンサート会場。数々の踊り子や演奏者が観光客向けに催し物を行う。
 本物の龍神の儀式は本来島の住民でしか執り行われない。が、クーラ ミタマの友人達という事で雷太、こあ、風音の3人は翌日の本物の儀式にも招待されている。
 彼らが知り合ったエピソードはカクカクシカジカで全部書くと一本の小説になってしまうので簡単にすると、姫君であるクーラがこの国の本土にある大学を卒業するために来ていて、見学の一環で雷太の高校に訪れていた。
 という感じなのだが、交友を深めた彼らはこうしてお互いに本土と神秘の島を度々訪問しあっている。
 具合悪そうに欠伸を一つ、風音はこの土地の物らしい天然水を飲んでこあに寄りかかってはすやすや寝息を立てて動かなくなる。
 お姉さんの気分になってちょっと嬉しそうだ。
 公演の途中、今日の職務を大体やり終えたクーラがようやくお出まし。真っ白い髪に、本土で見て気に入ったらしい似つかわしくないツインテールを揺らしながらステージの中心部分に立つ。
 とても長い前置きに雷太も虚ろ虚ろで妹に寄りかかって、今度は嫌がられて頬をつねる。

「なんで俺はダメなんだよ」
「うるさいです」

 長い話は放置した麺のようにどんどん伸びる、増える。
 かつて会っていた頃とは打って変わって声も鋭くきっちりしている様子は、最初見た時は驚いた、という思い出で考え込む。
 最後にまた少し長いお礼の言葉を並べ、奥に去ってしまう。
 大きなあくびを一つ、雷太は「終わった終わった」と小声で呟きながら寺院を後に。


 これも客向けに用意されていた木製のベンチに座り込んでただ穏やかに過ごす。
 目を瞑りながらぼーっとしすぎて小鳥が1匹頭で毛ずくろいしながら時々さえずっていた。
 木々の葉が風でこすれる音さえ誇張されてリラックスモードに入った瞬間、束の間の急速に邪魔が入った。小鳥はどこかへ逃げてしまい、大量の落ち葉と共に堕天使が落ちてきた。
 彼女はあまりにも石頭だったらしく、石畳を突き破り頭の方から埋まっている。黒い天使の羽も合わせて直立していた。
 突拍子もなさすぎる出来事に一瞬は起き上がってしまったものの疲れが勝って再び眠ってしまう。

 次起きた時には夕暮れ、妹のこあに体を揺すられても起きなかったので耳元で銃弾を発射され飛び起きた。

「うるせえ! 耳壊れる! って、また寝てたのか俺は」

 ふと先程の事を思い出して視線を向けるとまだ堕天使らしき女性が埋まっている。

「兄さん。またなんかしたのですか?」
「してねえよ。多分空から落ちてきて一回起きたがよ、疲れて寝てしまった」

 悟りを開いたかのように埋まった堕天使は身動きも取っていない。かわいそうなので引っ張り出しましょうと兄の雷太に提案するが、

「面倒なのは嫌いだ。明らかにヤバそうじゃねえかよ」
「兄さんよりやばい人はいません! 手伝ってください」

 鋭い視線で返す。
 何かを警戒したのかこあが先頭に、後ろから雷太が引っ張る形で力を込める。
 どうにかこうにか引っ張り出すと、良くも悪くも王道堕天使な感じだ。
 赤い目に白のメッシュが入った黒い髪の毛、朽ちた黒い羽が立派に生えていた。

「あ……ありがとう、ございます。あ、あれ? 天界から落ちてきたのに、意外と大丈夫なんです、ね」

 泥まみれの顔を必死に手で綺麗にしようとしながら、半泣きで状況の整理。
 緑埜(みどりの)兄弟にジロジロ見られてるのに気づく。

「怪しい者じゃありません。でも羽黒いしすごい堕天してるっていうか、そんな感じですけど、大丈夫だと思います!」

 それを聞いて二人顔を合わせて同時に頷く。

「帰るか」
「帰りましょう!」